2008/08/08 いまさらひぐらし

(ネタバレは避けてるつもりだけど、本当にまっさらから始めようと思っている人がもしいたらスルーのこと)


ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編(1) (ガンガンコミックス)


しばらく前から、ひぐらしのなく頃にをやってた。
色々ある身なのでズブズブはまってしまわないように程々に自重しつつ、漫画版(出題編)->原作サウンドノベル(アニメもチラ見)と進んだり戻ったりして来て、今日ようやく目明し編を終えて。
最近神判定の閾値が下ってるのかもしれないけど、これはヤバい。


ひぐらしがどの程度メジャーなのかが今一つかめていないのだけれど、ものすごくおおざっぱに表すとサイコサスペンスでホラーでスプラッターなミステリーとでも言うのか。元々はコミケで頒布されてたサウンドノベル型(ただし選択肢はない)のミステリーで、それがマンガなりアニメなりにメディアミックスされていったもの。アニメ的な萌え絵は偽装と思った方が良い。
ミステリー仕立てで「謎」が提示されるのだけど、出題編が3+1部あったあとにそれとははっきりと区別される回答編(これも3+1?)が別にあり、この出題->回答の間が初出で年単位で開いているようなのはなかなか類を見ないんじゃないか。


十代の少年・少女による残虐事件の時に、このひぐらしに関する何かを持っていたということが取り上げられて、「残酷な描写による影響が云々」などと言われてアニメが放映中止になったり、それに対して「どういうゲーム脳的短絡思考だよ!pgr」的な反論がネットでされていたり、というようなことだけ知っていてずっと気になっていたけど、ふとしたきっかけで手にとってしまった。実際どうなのよ、って。
(ニコニコ動画なんかではテーマ曲のYouが有名だったりするアレ)


で、実際やって(読んで)みると、確かに残虐描写もあるけれど、そういう表面上の表現の問題では済まないほどの心理的負荷をもたらすものだというのも確かだよなぁ、と実感してしまった。
マンガではこの毒はちょっと薄らいでるし、アニメだとかなり毒抜きされているように思うけど、原作は相当キツい。
確かに作中でナタ振り回すからといって自分もナタを振り回したくなる、なんてことはない。ハリポタを読んで箒に跨ってベランダから飛びだしたりするのよりもずっとありえない。
でも自我が弱まっていたら、これをきっかけに発病することは十分にありうるだろう。それぐらいにヘビー。


しかし回答編の1作目を終えてわかった。この毒は劇薬の毒だ。筆者がテーマを伝えるために丹念に織り込んだ劇薬。
作中の毒は、「いかにしてこの惨劇を回避するか」というコミットメントを誘発するために不可欠なものであり、さらに出題編と回答編を分けることで、「いかにして出題編だけで自分なりの考えをまとめあげるか」というようにさらにコミットメントが促進される。
普通にミステリーを読むとき、これほどまでに作品にコミットしたことなんてなかった。興味をひかれるままにどんどん読んで読み終えてしまうし。
今回、漫画版から手をつけて数週間が経ってるけれど、直接読み進めていない間も、ずっとこのプロセスは潜在して動いてたし、抱え続けていた。
そして楽しむために大事なのは「いかに短い時間で正解に到達できるか」ではなくて、「いかにじっくりと時間をかけてコミットするか」ということだったこともよくわかった。だから多分アニメ2クール(DVDで9枚くらい)だけで出題編->回答編へとスルスルと流れてしまったらものすごいもったいないことだと思う。はっきりとした区切り目、枠を活かすのがとても重要。


とはいえ、コミットを深めれば深めるほど、個人的な実りは多くなるのだろうけど、かといってその謎の泥沼に引きずりこまれてしまうと発病の危険も感じられるぐらいなわけで。
なので多分本当は、先達がいることが望ましいんだろう。キノコを食べるときの羊飼い役みたいな。あるいは見守り手みたいな。
決してネタバレをするのでも誘導をするのでも自分の体験を押しつけるのでもなく、安心して惑えるような環境を守る人。
自分の場合にも身近ではなかったけれども、「漫画だけじゃもったいない、絶対に原作もやるべき」と背中を押しやがった人がいたわけで、今となっては感謝せざるをえない。


ということで、要するにオススメなので面白いものを探してる人は是非やってみるべき、ということ。原作のサウンドノベルは一番最初の編がまるまる体験版でできる。
秋の夜長にとっておくのもいいかもしれないけど、じっとりとした空気でセミのなく時期にやるのも風情があるもので。涼やかにもなるし。


そして今画像を探していたら、紙のノベルスもあったのか。そういえば生協で見た気もする。でも値段が半端ない。揃えるとPC版の5倍くらいになるんじゃなかろうか。
ひぐらしのなく頃に 第1話 鬼隠し編 上 (講談社BOX)